4代目織元の須本氏は200年以上も続く烏城紬の技法を一人で守るだけでなく、技術継承のための講座を開始。また烏城紬保存会を立ち上げ、後継者育成や普及活動に取り組んでいる
左:須本 雅子さん(第4回「三井ゴールデン匠賞」 受賞 ※団体として受賞/烏城紬4代目織元 烏城紬保存会 代表)
右:三井E&Sホールディングス 経営企画部 広報室 竹見 葉子さん
4代目織元の須本氏は200年以上も続く烏城紬の技法を一人で守るだけでなく、技術継承のための講座を開始。また烏城紬保存会を立ち上げ、後継者育成や普及活動に取り組んでいる
左:須本 雅子さん(第4回「三井ゴールデン匠賞」 受賞 ※団体として受賞/烏城紬4代目織元 烏城紬保存会 代表)
右:三井E&Sホールディングス 経営企画部 広報室 竹見 葉子さん
❶烏城紬は草木染の色糸が折り重なり、まるでおぼろげな景色を眺めるような素朴でやさしい色合い、柔らかな手触り、軽くてあたたかい着心地で、着る人も見る人も心が安らぐ ❷烏城紬の緯糸は、撚りをかけず、空気を含ませるように束ねた糸を細い糸(からみ糸)でくるくると巻きながら丁寧に手紡ぎする ❸共同の工房である烏城紬伝承館 ❹烏城紬保存会では作品展を開催し、烏城紬の魅力を伝えている ❺講座の卒業生には県展で入賞を果たすお弟子さんも。写真は講座第2期の卒業生で、同会副代表を務める日原資子さんと入賞作品 ❻着物以外にも日常使いのアイテムを作り、烏城紬の普及に努めている
80代でも第一線で活躍する須本氏は、第3回MGT賞のファイナリスト。これまで岡山県美術展覧会での大賞や、中小企業長官賞、内閣総理大臣賞も受賞している

さまざまな色の糸を用いたため、「色、色、色、」と名付けた。経糸の整経をする際は、工夫して縞の太さに変化を付け、今までに使った残りの経糸も加えた。織る際には、薄い色と使い残した緯糸を使って多色に。あまり目立たないようにしながらも、濃い色を入れて文様に変化をつけた。
今回の受賞は、かつて私一人でやっていた
烏城紬は200年以上前の江戸時代からある伝統的な織物で、両親の代までは、糸紡ぎや染色、機織りなど、各工程を分業でやっていました。でも分業だと、担当外の工程で何か不都合や困ったことが起きても自分ですぐに対処できないし、品物には責任を持ちたい。だから、私が跡を継いだときから、どの工程もすべて自分でやろうと決めました。
いろいろと苦労しましたが、何とか一人で作り、作品が県展などで入選するようになってきた頃、岡山市の岡西公民館の館長さんが「一人でやっていてはいずれ絶えてしまう。ぜひ郷土の技をみんなに教えてほしい」と声をかけてくれたんです。教えるなんて私にできるのかととても悩みましたが、この技術を継承しなければと平成7年から講座を始めました。講座は1クール3年をかけて学び、卒業生の数は延べ100人にもなりました。また多くの人に広めるため「烏城紬保存会」を立ち上げて、卒業生の方たちと作品展を開催したりイベントに参加したりといった活動も行っています。保存会の方たちは、着物だけでなく、たとえば名刺入れや小銭入れといった日常使いの小物など「こんなものを作ったらどうか」と、烏城紬の魅力を広めるためのアイデアを考えてくださるんです。本当に夢のような話で、私一人の力ではここまで続けたり広めたりはできなかったと思いますし、もしかしたら作ることを途中でやめていたかもしれません。喜んで熱心に活動してくれる姿を見て、私も負けられないと大いに励みになっています。
一番の特長は、糸に
昔は着物の本を買って着想を得たりしていました。でも最近は他人が着ている服や持ち物でも、縞を見ると「あれもいいなぁ」と気になったり、TVドラマを見ていてもストーリーよりも服に気が向いてしまったり(笑)。お菓子の包装紙を見てひらめいたり、寝ていて夢で縞を見ることもあって、生活すべてが烏城紬になっています。生徒さんが織っている布も「この色いいなぁ、私も次回染めてみよう」と勉強になります。こんなふうに自由な発想ができるのは、烏城紬が全工程を一人で作るからです。もし織るだけだったら、色も糸も与えられたもので作るしかないけれど、烏城紬なら柄のデザインだけでなく、糸をどんな色で染めようかというところからできる。この楽しさや素晴らしさも烏城紬の大きな魅力です。ぜひ次の世代にも伝えていきたいですね。
出典:MITSUI Field vol.55(2022年7月15日発行)
※社名・役職名等は実施時期のものとなります。