昭和初期に途絶えてしまった小倉織を復元・再生し、帯を中心に作品の発表を続ける。さらに生地やデザインの独自性に着目し、ファッションや建築など多分野へ小倉織の可能性を広げている。
左:築城 則子さん(第4回「三井ゴールデン匠賞」 審査員特別賞受賞)
右:東洋エンジニアリング 経営企画本部 広報・IR部 山田 拓生さん
昭和初期に途絶えてしまった小倉織を復元・再生し、帯を中心に作品の発表を続ける。さらに生地やデザインの独自性に着目し、ファッションや建築など多分野へ小倉織の可能性を広げている。
左:築城 則子さん(第4回「三井ゴールデン匠賞」 審査員特別賞受賞)
右:東洋エンジニアリング 経営企画本部 広報・IR部 山田 拓生さん
❶❷日本の織物の多くは経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の比率が1:1であるのに対して、小倉織は経糸の本数が2~3倍と非常に多い。そのため緯糸はほぼ見えず、美しいたて縞が現れる。織る途中で緯糸によるデザインの変化や調整を行えないので、デザインは織る前に経糸を並べる「整経」の段階で決まる。整経に要する時間は、ほかの織物では数時間から1日程度だが、写真の小倉織は経糸が1cmあたり60本、全部で2200本もの経糸が入っており、三日三晩かかっている。また経糸の間隔が密である分、織る際に踏木を踏むにも力が必要で、築城さんが小倉織を再現した当初は、あまりに重くて踏み降ろせなかったそう。築城さんが手織りする小倉織は自ら草木染した木綿糸を主に用いる。❸❹はっきりした縞模様や美しいグラデーションを描くために、さまざまな色や濃淡の糸が揃う。❺染色は工房として使っている古民家の以前、浴室だった場所で行う
縞のデザインは色鉛筆でおおよそを決め、整経で実際に糸を並べながら完成させる。着想は、滝や明けていく月夜、ヒグラシの鳴く夕べなど音や空気感から得ることも多い
現代の小倉織として「EVOLUTION(進化)」から名付けた新シリーズ。自社工場に導入した最新型整経機により、140cmの生地幅全体をキャンバスに見立てた自由なデザインを可能にした。機械に「手」の技を同化させ、小倉織の特色である経糸の高密度が、より表現を深めている
素晴らしい賞をいただき、本当にありがとうございました。MGT賞に応募したのは、単に作家や作品だけを見るのではなく、新しい部分や次へ向かう部分を見てくださっている、いわば、伝統工芸のもっと先を見ている賞だと思ったからです。私は手織りで作品づくりをしていますが、テキスタイルデザイナーとして機械織にも取り組んでいて、今回は後者で応募しました。伝統工芸の世界で手仕事と機械という二刀流は少ないですから、こうした点も認めていただけたのかなと思って大変うれしく思いました。
小倉織は
「小倉 縞縞」というブランドができて早い時期に、経産省を通じてパリやフランクフルトの見本市に参加しました。その経験を1~2年積んだ後はジャパンブランドとして4年間、出展しました。そこで見てくれたイタリアの建築家からの誘いでミラノサローネにも出たのですが、そのご縁でミラノの建築家や照明デザイナーの方々からオファーをいただくようになりました。また「小倉デニム」というのを開発してアメリカで展開しています。小倉織は日本のデニムのルーツと言われているんですよ。
海外の方たちの基準は「グッドデザイン、ハイクオリティ」で、まずものをパッと見て、生地を触る、見る。理屈や背景は二の次で、本質の部分で判断してくれます。だから、海外に持って行ったときにダメと言われないものを作ろう、というのが私の基準になっています。
私が染織を始めたきっかけは、能の装束の素晴らしさに魅了されたことでした。そして、今、小倉織を作ってくれている若い人たちは、私の作品を展覧会等で見たのがきっかけになっています。この先も、見てくれる人たちとの距離や接点はどこでどう生まれるか分かりませんが、私が良い仕事をして発表していくことが、次代の人たちの「自分も作りたい」につながると思っているので、これからも努力していくつもりです。
海外の方たちと関わる中で、伝統工芸にこそ日本が世界に発信できる技術やデザインがあると確信しました。たとえば日本の西洋画も素晴らしいのですが、それ以上に伝統工芸は長い歴史を持ち、日本固有の文化を有しているものとして非常に評価が高いのです。「守り」ではなく、むしろ攻められるものであるということを、三井さんのグループ力でもっと内外にアピールしていただけたらと思います。
また日本の伝統工芸は、一つひとつの工程に時間や手間がかかり、作り手の意識としては、どうしても技術や道を追求するという内側に向かってしまう。その分、外に向けて打ち出す力が弱いように感じます。そうした現状に対して、MGT賞は、工芸に携わる人たちの目を外にも開かせるきっかけになるものです。ぜひこれからも、伝統工芸の未来を見つめ続けてくれることを期待しています。
出典:MITSUI Field vol.60(2023年10月15日発行)
※社名・役職名等は実施時期のものとなります。