香川漆器や日本の漆芸の将来のため、新技法の開発、若手をサポートする団体の設立、香川漆器の技法を基本としたアート作品の制作という3つの活動に積極的に取り組む。
左:松本 光太さん(第4回「三井ゴールデン匠賞」 奨励賞受賞)
右:三井E&S 経営企画部 広報室 國富 靖加さん
香川漆器や日本の漆芸の将来のため、新技法の開発、若手をサポートする団体の設立、香川漆器の技法を基本としたアート作品の制作という3つの活動に積極的に取り組む。
左:松本 光太さん(第4回「三井ゴールデン匠賞」 奨励賞受賞)
右:三井E&S 経営企画部 広報室 國富 靖加さん
香川漆芸の「蒟醤(きんま)」は、器物に塗り重ねた漆に蒟醤剣で文様を彫り込み、その溝に色漆を埋めて、表面を研いで文様を表現する伝統技法。道具は松本さんが自ら使いやすいようにつくっている。文様は下絵がなく、イメージで思うように蒟醤剣を走らせて彫っているそう。この丸い文様を一つ彫り上げるまでには1週間くらいかかるという
右/石粉塗りの漆器は金属カトラリーも安心して使える。陶器のような味わいある見た目だが、国産の木地を使っているのでとても軽くて使いやすいのも魅力
左/香川漆芸の伝統技法のひとつである「象谷塗(ぞうこくぬり)」を、石粉を使ってアレンジしたぐいのみ。象谷塗は、水辺に自生する真菰(まこも)の粉を蒔き、漆を擦り込んでツヤをつける技法
庵治石の粉を漆に練りこみ、凹凸で表現する石粉塗の茶箱。総香川産を目指し、木地から素材、製作まで香川県にこだわった作品。象谷塗を発展させ詫び寂びのある夜の中に登りゆく満月は、見る人の気持ちによって凛々しくもあり、おぼろげにも映るように想いを込めた。
私が取り組んできたことを認めていただけて本当にありがたかったです。香川県の郷土のこと、そして産業や芸術を広めたいと思っていつつも、あまりに地方過ぎて、どう発信すればいいかわからなかったのですが、MGT賞という賞があり、さらにはこうして受賞できたおかげで発信することができ、その点でも非常にうれしく思っています。
香川県には「
香川漆芸は県内の人でも「香川は漆器が有名なの?」という人がいるほど知られていません(笑)。でも、これまで6名もの人間国宝を輩出していますし、国内に2カ所しかない漆芸専門の研修所もあります。これからも人間国宝やアート的な作品が生まれる産地であるためには、漆芸がしっかりとした地場産業でなければなりません。しかし現状は非常に厳しい状況です。そこで、「ザ・香川」と呼べるような香川ならではの漆器をつくる必要があると思ったんです。香川県には庵治石という銘石があるので、これを活かしながら、地元の木地職人が木地をつくり、塗師が漆を塗って香川の技法を施すという作品展開ができれば、香川漆器の話題性や面白味が高まる。香川オリジナルのブランドを確立することで、地場産業としての香川漆器を国内外に広めることができる。そう思って開発したのが石粉塗りです。
実は、香川の漆芸研究所の卒業生は、県外に出て行ってしまうのが当たり前。それは、香川では漆器が産業として発展していないし、漆器では食べていけないからです。そんな彼らが「漆が大好きなんだ、漆をやりたい」と涙を流しながら訴えてくるのを見て、自分が漆器の業者になり、産業化の一翼を担えたらと思うようになりました。そこで、情熱を持った本気の若者を募って始めたのがSinraです。香川漆器ならではの新たな技術や面白さを提案し、付加価値のある製品作りをしながら、若手がチャレンジできる環境を確保し、香川漆器を次世代につなげていきたいと思っています。
Sinraの商品は日常での使いやすさにこだわっていますが、これは昔の漆器のイメージを払拭しなければ売れないと思うからです。その一方でアートとしての作品作りもしているのは、作品の魅力を出すためにはアート要素が不可欠だからです。単に今まであったものを作り続けるのでは伝統は続かない。逆に、今は「なんだこれっ!?」と言われるような漆器だったとしても、50年後には伝統と呼ばれているかもしれない。そこまで見据えて作っていかないと持続性がないと思うんです。だからSinraのスタッフには「アートとして作品を作りなさい」「心の中にあるものを出しなさい」と伝え、「森羅展」という作品展を毎年開いています。
MGT賞の受賞作品を一堂に集めた展覧会を開いてほしいですね。そこに参加できるパスポートのようなものがMGT賞だとなれば、多くの人がより一層「MGT賞に出したい! チャレンジしてみたい」と思うような気がします。もちろんMGT賞の受賞はうれしいことですが、作品や取り組みを一般の方に知ってもらったり交流したりと、今後の広がりにつながる機会を提供してもらえたら、さらにモチベーションが上がるし、きっと憧れるものになると思います。
出典:MITSUI Field vol.62(2024年4月30日発行)
※社名・役職名等は実施時期のものとなります。