第4回「三井ゴールデン匠賞」受賞者一覧(敬称略・50音順)

第4回ゴールデン匠賞
第4回三井ゴールデン匠賞

烏城紬保存会うじょうつむぎほぞんかい

須本 雅子すもと まさこ
※団体として応募

烏城紬うじょうつむぎ/岡山県

リンク
第4回三井ゴールデン匠賞

佐々木ささき 正博まさひろ

漆芸しつげい/香川県

リンク
第4回三井ゴールデン匠賞

株式会社かぶしきがいしゃ
松崎人形まつざきにんぎょう

松崎まつざき 光正みつまさ ※団体として応募

江戸木目込人形えどきめこみにんぎょう/東京都

リンク
第4回三井ゴールデン匠賞

松山まつやま 好成よしなり

伊賀いがくみひも/三重県

リンク
第4回三井ゴールデン匠賞 モストポピュラー賞

宮本みやもと 雅夫まさお

九谷焼くたにやき/石川県

リンク
審査員特別賞
image
作品

福岡県

築城ついき 則子のりこ詳細はこちら

小倉織こくらおり

https://shima-shima.jp

応募タイトル

伝統工芸の小倉織を現代のテキスタイル「小倉 縞縞」として創出

image
作品

秋田県

はやし 美光びこう詳細はこちら

金銀銅杢目金きんぎんどうもくめがね

応募タイトル

金銀銅杢目金きんぎんどうもくめがねの再現と発展・継承

奨励賞
image
作品

東京都

クリエイティブ・シェルパ詳細はこちら

代表:羽塚 順子はねづか じゅんこ藤田 昂平ふじた こうへい ※団体として応募江戸仕立てえどじたてみやこうちわ千鳥型ちどりがた

https://creativesherpa.net

応募タイトル

後継者不足の職人技を障がいのある異才の若者が継承

image
作品

香川県

松本まつもと 光太こうた詳細はこちら

香川漆器かがわしっき

http://sinra-urusi.com/

応募タイトル

香川県の可能性と魅力を最大限に集約。石粉塗いしこぬりによる新しい香川漆器を開発

第4回三井ゴールデン匠賞 
受賞者詳細

烏城紬保存会うじょうつむぎほぞんかい 須本 雅子すもと まさこ ※団体として応募 烏城紬うじょうつむぎ/岡山県

応募タイトル

岡山県指定郷土伝統的工芸品である烏城紬の伝統と技術の伝承を目指す

https://ujo-tsumugi.jp/

3年1クールの講座で烏城紬の基礎を学んだメンバーを中心に、1998年「烏城紬守る会」(現:烏城紬保存会)を立ち上げる。2009年保存会の拠点となる「烏城紬伝承館」を構える。四代目織元・須本雅子氏を中心に、現在は50名以上の会員が技術を磨き伝統を後世に伝えるために活動

作家画像
作品
受賞者
コメント
三井ゴールデン匠賞をいただいて、正直驚きました。もらっても良いだろうかという思いもありました。
織元として烏城紬を継いで、初めは、全部の作業を一人でするのができるのだろかという不安もありました。
でも、全工程を一人ですることで、全てのことが分かり、作品に責任をもつことができると考えました。
公民館の講座を始めてからは、生徒の皆さんが喜んで熱心に活動してくれたので、私も励みになり、負けられないという思いで頑張ることができました。
一人では、今まで続けて来られなかったと思います。
伝統工芸を繋いでいくことが難しい時代ですが、烏城紬を知ってくださる方も増え、このような賞を作ってくださったことは、励みになると感謝しています。
今まで関わってくださった方に感謝しておりますし、今回の受賞が、保存会の皆さんの励みになればと思っています。
講評

須本氏が中心となって始まった烏城紬の技術保存、継承への活動が今では大きく広がり、講座卒業生の中には県展で入選する者も。積極的に保存会会員が須本氏とともにイベントに参加し、商品についての評価や好まれる柄などの研究、マーケティングを重ねてきた。その継続した努力が評価され、第3回(ファイナリスト)に続いて、今回はゴールデン匠賞受賞となった。「工芸界でより女性が活躍する場を固める、大きな役割を果たしている」(審査員・福島武山氏)。また、「紬のやわらかい風合い、極めて繊細な縞のニュアンスが素晴らしい」(審査員長・外舘和子氏)と織物としての評価も高かった。

取り組み

岡山県指定郷土伝統工芸品である烏城紬。産地として大きくなく、工程は分業せず、糸紡ぎから精練、染め、整経、機ごしらえ、織りまでを一貫してひとりで行うため、技術の継承は容易ではない。その技法をひとりで守ってきた四代目織元の須本雅子氏は、技術継承のため3年1クールの講座を開始。現在は、9期生が最終年度を迎えており、10期の希望者は定員を超えそうな状況である。
講座で基礎を学んだ卒業生は技術を磨きたいという思いから、「烏城紬保存会」を設立。共同で使える工房として烏城紬伝承館も立ち上げ、50名を超える会員が伝統の継承・技術の向上につとめる。烏城紬の技法と品質を守るため、平成15年には「からみ烏城」として商標登録をした。

作品紹介

烏城紬「色、色、色、」

さまざまな色の糸を用いたため、「色、色、色、」と名付けた。経糸の整経をする際は、工夫して縞の太さに変化を付け、今までに使った残りの経糸も加えた。織る際には、薄い色と使い残した緯糸を使って多色に。あまり目立たないようにしながらも、濃い色を入れて文様に変化をつけた

佐々木ささき 正博まさひろ 漆芸しつげい/香川県

応募タイトル

蒟醤きんまの持つ繊細な美しさをグラデーションで表現する独自性

1979年武蔵野美術大学大学院造形研究科修了。1983年日本伝統工芸展初入選。1990年日本伝統漆芸展朝日新聞社賞受賞(以来5回受賞)。2008年日本伝統工芸展東京都知事賞受賞2009年日本伝統漆芸展監査委員就任(以後4回)。2009年香川県指定無形文化財「蒟醤」技術保持者認定。2014年日本伝統工芸展監査委員就任(以後1回)。2021年香川県文化功労者表彰

作家画像
作品
受賞者
コメント
此の度は三井ゴールデン匠賞を戴き身にあまる光栄です。
先人の言葉に「古人の跡を求めず古人の求めたる所を求めよ」という言葉がありますが伝統工芸を固定化した技術として捉えるのではなく先人の新しい物を創造するという志が新しい技術の積重ねになり伝統工芸という物になっていると思います。
これからも香川漆芸独特の蒟醤技法を発展させ自分の新しい色彩表現を目指したいと思います。
かつて南蛮漆が多くヨーロッパに輸出されたことを思えば三井ゴールデン匠賞が世界に発信出来る場に成ることを期待致します。
誠にありがとうございました。
講評

讃岐漆芸の伝統を受け継ぎながら、現代的な漆作品を模索している佐々木正博氏。従来単色の地色が用いられてきた蒟醤の技法にはなかった微妙なグラデーションと、繊細な文様を駆使した華やかな表現が「圧倒的な技術力と創造性を持つ」と審査員全員から高く評価された。蒟醤をさらに広めるため、グループ展、個展の積極的な開催、小学生を対象にしたワークショップを20年以上継続している。

取り組み

「伝統工芸であっても、作家としてのオリジナリティがほしい」と、蒟醤の技法をベースに、独自の手法でグラデーションの表現法を生み出した。本朱漆から黒漆まで少しずつ黒を入れた色漆を5段階作っておき、本朱、少し黒い本朱、黒漆とぼかしながら返しを入れて塗り、3段階の湿度の違うムロで少しずつ乾かす。蒟醤は、後から彫りを入れるため垂れないように厚く上塗りをするのが難しい、と佐々木氏は語る。1ヶ月間乾かしたのち、文様を彫る。黄口の朱漆、赤口の朱漆にも少しずつ黒漆を入れ、色漆を5色ずつ作っておき、彫りのあと、この色漆を市松模様に沿って埋めていく。埋める色漆が同じ色であっても、下の上塗漆の明暗によって変化が見える。その色のずれが同じ色であっても微妙に異なり、グラデーションとなる。従来の蒟醤技法の持つ色の表現をより多様化し、現代的な作品を実現させた。

作品紹介

乾漆蒟醤草花文八角蓋物かんしつきんまそうかもんはちかくふたもの

漆の最も美しい色と考える黒と赤をグラデーションより構成し、伝統的かつ新しい表現を目指して制作した蓋物。本朱の上途の上に蒟醤技法により彫を行い、埋め研ぎ出し、赤口と黄口の朱漆をグラデーションにして表した

株式会社かぶしきがいしゃ 松崎人形まつざきにんぎょう 松崎まつざき 光正みつまさ ※団体として応募 江戸木目込人形えどきめこみにんぎょう/東京都

応募タイトル

動物、昆虫、植物をモチーフに木目込きめこみ技法で新しいオブジェを創出

https://www.koikko.com

1953年東京都出身。1976年多摩美術大学彫刻科卒、同年株式会社松崎人形入社。2006年同社代表取締役に就任、現在に至る。木彫、彫塑を得意とし人形その他の創作をすべて自らの手で行う。日本工芸会正会員。伝統工芸士(江戸木目込人形、江戸節句人形)

作家画像
作品
受賞者
コメント
この度は思いもよらずゴールデン匠賞を頂戴いたし誠にありがとうございました。
この道に入り47年を過ごしてまいりましたがまだまだ先の長い様な気がいたします。お陰様で毎日楽しく仕事をさせて頂いております。人形は他の工芸と少し違う物なのかなと最近良く思います。若いころは自分の仕事が見えていなかったせいか、仕事の面白さより多忙な毎日に翻弄されておりました。50歳を過ぎた頃から人形の持つ可能性に少しずつ気が付いてきました。
人形には機能的な要素が有りません、只、飾っていただいて鑑賞する対象だと思います。そこが肝だと思います。それゆえに 人に寄り添い、励まし、慰め、楽しませる。今一番大切なものが人形にはあると思います。そんな気持ちでこれからも人形に係る仕事を続けたいと思います。
三井ゴールデン匠賞に期待することは、手で物を作り出す喜びと それを続ける事が出来る状況をこれからの時代を担う人が享受出来るようにサポートをお願いしたいと思います。日本の伝統工芸は世界に類を見ない質の高さと美しさを備えた日本の宝だと感じております。それに携わる人たちの情熱も並外れた物だと感じております。どうか末永くサポートをお願いいたします。
講評
木目込みという技術は同じながら従来の節句人形とはまったく方向性の違う、動物や昆虫、植物をモチーフとしたオブジェに、「高い木目込みの技術力と斬新さを感じる。人形文化をしっかりと育てている」(審査員・福島武山氏)と高評価。若い職人の育成にも力を尽くし、フランスなど海外にも積極的にアピール。アートとしても十分に受け入れられるクオリティで、人形工芸の新しい方向性を示した。
取り組み

木目込み人形は、1740年ごろに京都・上賀茂神社で祭事用柳箪(奉納箱・賽銭箱)を作った職人が、残った木片で人形を作ったのが始まりとされる。桐糊(桐の粉と糊を混ぜたもの)を固めた人形に溝を堀り、金欄や友禅などの布地をヘラで入れ込んで(=木目込む)作る伝統的工芸品である。

雛人形、五月人形と節句人形として高い人気を誇ったが、少子高齢化、核家族化などのライフスタイルの変化で今は需要が下がりつつある。松崎人形では、消費意識の変化や今までのような大量生産、大量消費ではない持続可能社会の視点から、ものづくりを再考。日本古来の木目込み技法、裂地、造形感覚を駆使しながら手作りのあたたかみを残しつつ、新たなモチーフ、用途で新感覚の製品を創出し、技術を次世代へつなげている。

作品紹介

insectum(インセクタム)

木目込みの技法と新しい3Dの技術を使い昆虫のオブジェを創作した。非常に細かい作業が必要で、手仕事で制作するのは不可能なため3Dプリンターを使用し実現。胴脚部はロストワックスによる真鍮の鋳造で作り、それ以外は直接出力し木目込みで仕上げ、裂地の美しさとフォルムの面白さを表現した

松山まつやま 好成よしなり 伊賀いがくみひも/三重県

応募タイトル

廃れかけている唐組台による組紐制作技術の継承

1971年、家業の組紐業に従事。1993年東海伝統工芸展初入選(以降26回、内受賞4回)。1996年日本伝統工芸展、日本伝統工芸染織展、各初入選(以降各20回、内染織展受賞1回)。同年伊賀くみひも伝統工芸士に認定される。1998年伝統工芸士会作品展特選、日本工芸会正会員認定。2016 年三重県文化功労章。2018年三銀ふるさと文化賞受賞

作家画像
作品
受賞者
コメント
この度はこの様な素晴らしい賞をいただきありがとうございます。
着物姿では着物・帯が主役で帯締めは脇役で、着物・帯を選んでその後に帯締めを選びます。
この賞をきっかけに帯締めに合う着物・帯を選んでいただける様になれば嬉しいです。
今後この技術の後継者を育てていきたいと思います。
ありがとうございました。
講評
長さ155cm、幅1.9cmの帯締めを作るには、毎日組み続けても4ヶ月以上かかるという唐組台による組紐。幅を揃え表面を平らに編み上げるにはたいへんな熟練の技を要する。「たとえ何に使うかわからない外国人が見ても、この作者ならではの帯締めの意匠の新鮮さ、技術の高さはわかるはず。また、唐組台自体も自身で作ることで、幅広い表現を追求、工夫する姿勢が素晴らしい」(審査員長・外舘和子氏)と好評を得た。
取り組み

奈良時代以前にまで遡る伊賀くみひも。組紐制作に使用する台には、角台、丸台、重打ち台、綾竹台、高台、唐組台があり、このなかで、唐組台で制作された組紐は手間のかかりすぎと難しさから現在ではほとんど販売されていない。帯締めの制作日数は手間のかかるものでも2週間ほどが通常であるが、唐組台となると2〜4ヶ月はかかり、手間も数倍以上である。平安時代からの受け継がれた唐組台での制作の技術。組紐職人でただ一人、有職糸組師として重要無形文化財保持者になった十三世深見重助氏亡き後、この技術を持つのはわずか数名である。

松山好成氏は稀有な技術を継承しているひとりで、日本伝統工芸展にて作品を発表。自ら染めた草木染めの糸を使用し、唐組台による組紐の技術の難しさと手間、素晴らしさを多くの人に伝えるべく努める。

作品紹介

くみひも(唐組)万華鏡

8cm×4cmの厚紙を布で包み5本の糸を巻き一束とし、112個の糸巻を使って制作。作品は中心に大菱、両側に小菱4個、両耳に無地を、染色は草木染して組み上げた。手だけで糸を締め、幅を揃え、表面を平らに組み上げることは熟練を要する技術で、制作日数は1日6~8時間かけ約140日を要した

第4回三井ゴールデン匠賞 モストポピュラー賞

宮本みやもと 雅夫まさお 九谷焼くたにやき/石川県

応募タイトル

九谷焼の本流、伝統と伝承の融合を未来へ

https://sinseigama.official.ec

1996年東京藝術大学美術学部卒業。1999年日本工芸会正会員認定。2005年文化庁新進芸術家在外研修員として渡伊。2014年伝統九谷焼工芸展大賞。2015年九谷焼伝統工芸士認定。2018年・2019年日本伝統工芸展出品作『緑彩真麗線文鉢』宮内庁買上。2021年日本伝統工芸士会作品展『緑彩花器雪月花』衆議院議長賞受賞

作家画像
作品
受賞者
コメント
この度の受賞にあたり、審査員の方々が今回の取り組みにおける私の意図を深く汲み取って下さったこと、また、地道な活動に光を当てて頂いたことに深く感謝しております。
血気盛んだった駆け出しの時を経て、特に40代に入って以降は徹底的に産地にこだわったものづくりを行ってきました。
外から見栄えの良いモノを持ち込むのではなく、むしろ足下を見つめると世界にも稀な表現が九谷焼にはあることに気付き、 肩の力が抜けると同時に生まれ育った土地を心から好きになりました。
これまで職人・作家・窯主として積み重ねてきた事やこれから目指すことについての評価、そして地道な取り組みも見つけてくださる三井ゴールデン匠賞の受賞は大きな喜びであり、誇りに思います。
今回の受賞が産地の様々な課題の解決に向かう一助となれば幸いです。
私に関わる全ての人と一緒に受賞したと思っています。本当にありがとうございました。
講評
「職人、作家としての技術の高さだけでなく、経営者、産地のリーダーとして積極的に行動して産地をけん引していることは素晴らしい」(審査員・河井隆徳氏、福島武山氏)。レベルの高い作品が多い九谷焼のなかでも、独自開発した絵の具の存在感、表現力が注目された。これは剥離しにくく透明度が高いことが特徴で、鮮やかさと温かみ、立体感ある独特の表情に焼き上がる。この絵の具を用いた緻密な絵付けと産地全体への貢献が高く評価された。
取り組み

1970年創業、九谷焼の上絵付け専業の窯元である真生窯。二代目宮本雅夫氏は、初代の色絵細描いろえさいびょう技法を継承しつつ、色、形、マチエールを追求した「緑彩りょくさい」をはじめとする独自の技法で青手九谷の新しい表現に取り組む。九谷焼は九谷五彩(紫、黄、緑、紺、赤)を駆使した華麗な上絵付が特徴ながら、近年は絵柄が単純化。伝統的な和絵具を使いこなす職人も減っている。宮本氏は九谷五彩、和絵具、細密画にこだわり、九谷焼の本質をつきつめながらも、洗練された現代的な作品に昇華。

窯主、九谷焼伝統工芸士会の企画委員長として、首都圏で絵付けのワークショップ、講座の開催、書籍、PR 映像制作、展示会などの企画構成と、「本物の九谷焼」を広く知らせる活動に積極的に関わる。

作品紹介

煌五彩瑞鳥文香炉こうごさいずいちょうもんこうろ
緑彩花鳥文香炉りょくさいかちょうもんこうろ

超絶に緻密な線描と、窯独自の透明度の高い釉薬を駆使し、塗っては焼く工程を十数回繰り返すことで立体的な質感を生み、宝石のような輝きを放つ。一本の生きた線が文様になり、それらが集まって絵になる。全てを突き詰めて生まれる真生窯の粋

-->