受賞者パネルディスカッションKOGEI EXPO福井

開催日:2016.11.25
  • グランプリ
    株式会社能作 代表 能作克治さん
  • モストポピュラー賞
    株式会社岩鋳 代表 岩清水晃さん
  • 杉原吉直さん

サンドーム福井(福井県越前市)にて開催された「KOUGEI EXPO 第33回伝統的工芸品月間全国大会福井大会」において「第1回三井ゴールデン匠賞受賞者によるシンポジウム」が開催されました。審査員を務められた株式会社和えるの矢島里佳氏をモデレーターに、受賞した5人の匠をパネラーとしてお招きし、受賞の感想や伝統工芸に対する思いなどについてお話しいただきました。

第1回「三井ゴールデン匠賞」受賞を振り返って

矢島
本日は第1回「三井ゴールデン匠賞」を受賞された5名の皆さまを迎えて、これからの伝統産業、伝統と革新について話していきたいと思います。皆さまどうぞよろしくお願いいたします。
それでは簡単な自己紹介も兼ねて受賞の感想、受賞後のエピソードなどをお聞かせください。まずはグランプリを受賞された株式会社能作の代表である能作さんからお願いいたします。
能作
私たちの会社は富山の高岡で銅器を製作し、全国10店舗の直営店で販売しています。直営店で販売しているのには理由がありまして、高岡に400年にわたり伝わる伝統的な鋳造技術やものづくりについて、お客さまに直接伝えたいという想いがあるからなんです。受賞後、読売新聞に数回掲載されたこともあり、直営店でお客さまに声をかけていただき、販売につながったことがあり嬉しかったですね。また、最近ではなかなか賞金のある賞というのは少ないのですが、「三井ゴールデン匠賞」では賞金をいただけて励みになりました。
矢島
これだけモノが溢れた時代において、直営店でお客さまに製品の背景を伝えて対話しながら販売するということは大切ですよね。 それでは続きましてモストポピュラー賞を受賞された岩清水さん、お願いいたします。
岩清水
岩手県盛岡市で南部鉄器の製造をしている株式会社岩鋳の代表、岩清水です。私たちの会社の売り上げの半分は輸出です。なぜこれほどまでに海外で売れるようになったかと言いますと30年程前に海外ではカラフルなほうが人気があるという情報を得まして、それまでは国内向けに黒や茶色が主流だったのですが、徐々に赤、青、緑といったカラフルな鉄瓶を輸出向けに製造し始めたからなんです。やはり海外で売ろうと思うと現地の環境や生活様式を知ることが大切なんだということを身をもって体験しました。
「三井ゴールデン匠賞」を受賞した感想はすでに何回も言っているのですが、感謝感激、この一言につきます。今までやってきたことが認められたようで本当に嬉しかったです。
矢島
伝統を大切にしつつも市場の拡大を目指して、それまでなかったカラーの南部鉄器を作り始めた先駆的な取り組みが今の南部鉄器の人気につながっているのですね。
それでは続きまして杉原さんお願いいたします。
杉原
越前和紙の紙問屋、杉原商店の杉原です。「三井ゴールデン匠賞」はものづくりをしている人が受賞する賞というイメージがありましたので、問屋の私が受賞したことに最初驚きましたが、とても嬉しいです。私は異業種との融合ということをよくやっているのですが、例えば越前和紙と越前漆器を合わせた漆和紙(うるわし)を使った商品を作っていて少しづつ市場も拡がってきています。「三井ゴールデン匠賞」を受賞したおかげでそういった活動を多くの方に知っていただき、特に県外からの反響が大きかったです。
矢島
問屋といいましても、杉原さんは長年プロデューサーとしてもご活躍で、そういう方がいらっしゃらないとイノベーションや新たな市場は生まれづらいと感じています。ですので「三井ゴールデン匠賞」も、ものづくりをされている方だけではなく、伝統産業界全体を支えているイノベーターを表彰していくという趣旨があります。続きまして立川さんお願いいたします。
立川
伝統技術ディレクターの立川です。私も杉原さん同様ものも作れないし、デザインもできないのですが、今回の受賞は伝統産業界におけるディレクターという存在を評価していただいたようですごく嬉しいです。
日本にはものすごく高い技術をもった職人がたくさんいて世界に類をみない工芸大国です。ただ決定的に不足しているのが、その職人や製品を外の世界に向けてアピールする人材なんです。ですので、日本には伝統工芸を起点とするブランドがほとんどないですよね。私はその状況を変えたくて、職人と建築家・デザイナーの間に立って、職人の価値を最大限に引き出し新たな価値を創造する仕事をしています。今回の受賞や今日のようなパネルディスカッションなどでこういう立場の人間がいるということを知っていただく機会が増えて有難いですし、少しでも後に続く若い人材が出てきてくれたらいいなと思っています。
矢島
立川さんは伝統産業界におけるディレクター、プロデューサーの先頭に立っていらっしゃる方で、伝統産業を活性化させていくには必要不可欠な存在です。
それでは最後に九谷焼の赤絵細描の第一人者である福島さんよろしくお願いいたします。
福島
受賞の感想ですが、報告を受けた時は本当にびっくりしました。「三井ゴールデン匠賞」は革新性を重視するということでしたので、私の作品がそれに当たるかどうか…と思っていたのですが、思いがけず受賞して自分がいちばん驚いています。石川県知事に受賞の報告にうかがったのですが、とても喜んでいただけて嬉しかったですね。 私は師匠がおりませんので、独学でやってきたのですが、上を目指すためにも描き始めた当初から様々な賞に応募してきまして、その度に審査員の方々から適切なアドバイスをいただいたことが大変プラスになりました。それが今回の受賞にもつながったと感じております。